材幅を揃えない、ズラして作るということ

 

糸面取り

ちょっと間が開きましたけど、質問に答えます。質問3はズレとも関係していますね。ズレは奥が深いんですよ。家具を作る時に「チリ」と呼ぶ部分があり、それも関わります。画像は棚内側のエッジの面取りをしています。天板と側板が突き付く所ですが、この入り隅になる部分は組み立て後にしか触れません。木端面のズレ、目違いを取ってから最後に慎重に糸面取りしてます。

<質問3> 動画内で棚板の短辺を側板や天板より数ミリ短くしたのは段違いを防ぐためでしょうか? 

<答え> 棚板の板幅を3mmほど短くしたのは確かに段違い、ズレ・・を目立たなくするためもあります。突き付く材料同士を同じ幅にして木端面を揃えると、あとでズレ、目違いを修正しないとなりません。前の記事でズレの話を書きましたが、そもそも材幅を揃えなければ、修正作業もありませんからね。

そして、材料幅を揃えない理由は他にもあります。デザインと面取りのことを少し話します。棚で言えば・・

1.すべての材を同じ幅で作る
2.一部の材幅を変える
3.全部の材幅を変える

という作り方ができます。

1はDIY初心者さんもよくやりますよね。1x4を使ってネジ止めで棚を作るとか・・これはデザイン用語で言えばモダン、コンテンポラリー・デザインといっていいかな。現代風で凹凸があまりありません。

3はどちらかといえばクラシックなデザインです。クラシックな家具は端に飾り面を付けるのが一般的でそのために材幅を変えて対処することも多いです。凹凸の多いデザインになります。

2はその中間です。18世紀に生まれたシェイカーに代表されるデザインでしょうか。現代風につながるものです。シェイカーは宗教上の理由で飾りを廃したもの作りをしました。そのためとてもシンプルな家具を作りました。前の時代からの影響で基本はクラシックですが、このシンプルさが後の物作り界に大きな影響を与えました。適度な凹凸感もあるかな。

で、kikikumaは飾り面はあまり使いませんが、糸面(材の角に施す小さな角面)は必ず取ります。これは手指と家具の保護のためです。同じ幅で2枚の板を突き付けると、入り隅の面取りをどう納める?という課題が出てきます。そこで材幅を変えて対処することを考えます。つまり「面取り」と「材幅」は密接に関連しているということです。

ということで・・棚板の材幅を変えた理由は
a.ズレが目立たなくなる、目違い払い(ズレの修正)をしなくて済む
b.糸面取りを組み立て前にしておける
c.デザインとして適度な凹凸感を出したい

です。では天板と側板は何故同じ幅にしたのか?

これはデザインの好みです。小さいベンチにもなる棚を作りたかったので天板と側板がつながっているデザイン、材幅を変えずに揃えるデザインを選びました。これのデメリットは目違い払いの発生、内側の面取りが組み立て前にできないことですね。画像のようにあとで作業することになります。ちょっと面倒です。出来上がった棚はコンテンポラリーな雰囲気で、棚板のズレが適度な凹凸感を生んでます。また全部揃えるより少し作りやすい・・という考え方からです。

少し付け加えると、材幅を揃えないことで生まれる段差を「チリ」と呼んだりします。上記の通り、チリは逃げでもあって、組んだらうまく揃わないことがあるから始めからズラしておくという知恵ですね。そしてそれが形、見栄にも影響するからデザインの要素でもあるんです。適度な凹凸感になります。

チリは敢えて揃えないという手法ですけど、チリ量をできるだけ揃えるように気を付けると仕上がりがいいんですよ。棚板が2枚あれば、そのチリを揃えます。ズレを2mmに揃える感じ。揃ってるチリはきれいです。ズレを許容しながらズレないようにがんばるって・・人生そのものですね。(笑)

最後にDIYフレンドリーなデザインはどれ?

1のように思えますし、初心者の皆さんはやっていると思います。でもそれはズレを見えないものとして扱ってるんですよね。買ってきた材では幅も微妙にみな違っていたり、まっすぐな面もありませんからそもそも揃えて作れない。ズレ、目違いが大量発生してるはず。でも、まずは形にしたい、何か作りたい、であればこれでOKです。

さて、ズレが見えてしまったあなたの場合・・もう見てなかった自分には戻れません。そうなったら材幅を変えて作るステージかな。無理なく、そつのない仕上がりになると思います。でも、材幅が揃っていないとどこを基準にして組み立てるかという課題は出てきますよね。棚であれば、設計上は裏側をズレなく揃えておくかな。裏面の目違いはあまり気にしないでもOKだし、揃えて削る練習をするとか・・

長々とズレの話でした。色々と試してみてくださいね。

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