「雇い実を使って棚を作ってみたけど、諸々聞きたいことがあります」
というコメントをいただきました。質問はこの記事のコメント欄にありますが、皆さん同様に悩まれるポイントなのかな。動画ではあまり細かい部分には触れてないのでわかりにくい所もありますね。ここで補足させてください。
<質問1> 雇い実加工なのですが今回は初めてなので少し失敗してもいいように、横30mmのサネに対して40mmの溝を掘って余裕を持たせて組み立て時にズレても修正が効くようにしたのですが、それが仇となったのかも知れませんが、組み立て時に組み立て治具を使用してもズレてしまいまして、やはりなるべくサネに対して溝はピッタリにした方がいいのでしょうか?
<答え> 溝は長めでOKです。サネ30mmに対して溝幅40mmでいいと思います。ピッタリに作ってもいいのですが、溝の端が丸くなってるので四角いサネの角が当たる可能性もあります。四角同士だといいんですけどね。ズレについては以下で答えます。
続けて関連している質問4です。
<質問4> トリマーなので木口を整えて材の直角をだしてなるべく誤差のない様に再製材しているのですが、どうしても組み立てる時に組み立て治具やネジdeクランプを使用しても1mm程度ズレてしまい至る所で段違いが起きてしまい、一番困ったのは側板が脚になると思いますが、ガタつきが発生してしまいそのガタつきを直す作業がとても苦労したのですが、なるべく綺麗に再製材しても段違いや脚のガタつきは高確率で発生するので組み立て後に修正すれば良いという気持ちの持ち様で良いのでしょうか?
<答え> 諸々のズレがネジレを生み、ガタつきになります。程度の違いはあっても避けられません。後で修正します。大丈夫ですよ。どんなものを作ってもそうですから。動画内で作った棚は無修正だったけど・・これは奇跡かも。今思うと修正する場面もあった方がよかったですね。
15mmの杉材を使って小ぶりの棚を作ったとのこと。薄い材の方が反りやねじれも出やすく、小さい物は誤差を吸収するマージンが少ないので精度が必要になります。つまり難しいんです。最後の修正も組み立て作業の一部と考えます。逆に言えば修正しやすいようにデザインするという考え方もあり、実際そうすることも多いです。これについては別の機会に・・
さて、「ズレ」について以下まとめてみます。
があります。
1はジョイントの加工精度。雇い実を使った場合サネと溝のはまり具合によって起こります。サネはきつすぎると困ることがありますからスッと入る程度がいいですけど、この遊びが多いとズレになることも。
2は溝の端を鑿で四角く加工してサネとピッタリ目にすればズレを少なくできます。ただ手間がかかるので組み立て時に合わせるように工夫した方がいいかな・・どうかなあ・・指物のような仕事が好きなら手間をかけてひとつずつのジョイントを作ってみてもいいですね。
もちろん製材精度、切断精度、ジョイント加工精度、組み立て精度のすべてがズレと関係します。とはいえ、木工です。0.5mmくらいの誤差はそこかしこにあっても帳尻を合わせればいいという考え方が一般的かな。その上で、ズレの量をできるだけ減らす工夫をするのは大事です。修正はできればしたくない。ひとつずつの精度を上げておくと後で楽ですね。以前こんな記事も書きました。
で、1mm程度のズレは0.5mm以下にできるよう工夫する方法はあります。
見直してみたらいいかなと思う点は仮組みです。本番は仮組み以上になることはありませんから、仮組み時にできるだけピッタリになるようにします。ここで妥協するとズレは大きくなると思います。ネジdeクランプを使ってますから、ネジの打ち方や順番を工夫してみてください。
ネジdeクランプ使用時、板の両端のネジはやや斜めに打ちますけど、作業時に注意します。斜めにネジを打つとズレやすいものです。仮に端から打っていくとして、1本目を打つときにズレないようしっかり手で押さえます。打ったらズレを確認します。もしズレていたらネジを半分緩め(45mmネジなら15から20mmくらい)、次のネジ、中央のネジを打つときにズレを修正しながらピッタリになるように締めます。中央のネジはまっすぐ入るからズレにくいです。上手くいったら1本目を再度締めます。もうズレないはずです。3本目を打って、念のため確認。4つの角があるとして、すんなりいった角とそうでない角が出てくると思いますが、そうでない角は印を付けて本番の時に注意してネジを打ちます。
もちろん仮組みの前に板の組み合わせ、位置は決めて印を付けておきます。棚であれば天板の前後、棚板の前後、側板の前後左右・・仮組みと同じ位置に本番でも組み上げます。動画ではマスキングテープで前後左右がわかるようにしてます。付番を入れてもOK。
中央のネジから打つ方法もあります。材が反ってない時に有効です。反ってる材料だと端から打った方が板を矯正していくのでいいと思っています。それでも中央から打つ方が上手くいくのならそれでもいいですよ。それぞれの板のクセで上手くいく、いかないがありますし、様子をみて、合わせていくのも大事です。
ちょっと思ったのはズレ防止にコーナークランプを使う方法。手でズレないように押さえますけど、それを補助するのにコーナークランプを使うのはアリかな。組み立て治具だとペーパーを貼ったブロックで奥行きのズレを防止してるけど、雇い実ならそれはいらない。縦方向のズレが課題なのでそれをコーナークランプで押さえておく。うーん、こんな子かな。試してみてもいいよね。補助があるのはいいことです。
ズレの原因がもうひとつあります。接着剤を入れると「すべる」という性質です。すべりは避けられませんけど、接着剤の量は調整できます。ちょうどいい量にします。(笑)
動画を見てこれくらいかなと感じてみてください。使うところによって量は変わりますけど、コーナー部ならちょっとはみ出るくらい。たくさんはみ出てるのは使いすぎで、よくすべります。足りないのもよくないから刷毛で接着面にちゃんと塗るようにします。木口に塗るときは吸い込むので注意します。少ないとすぐ乾き、いいことはありません。
最後にネジdeクランプの良さはコーナーひとつずつ、ジョイントひとつずつを接着していけることです。ですから焦らずひとつずつをできるだけいい感じに調整して固定します。
組み立て?「そんなの簡単にできるよ」「仮組みなんて必要ないよ」という人もいるでしょう。職人の世界では仮組みをしないけど、kikikumaは大事だと思う。大事なイベントではリハーサルしますよね?リハーサルで事前に見えていなかったことが見えてきます。組み立ては簡単だと思えば簡単、形ができればいいと思えば、簡単。ただ、どのような結果を望むかでこれは変わります。
kikikumaはどうなの?いつも簡単そうに作ってるけど・・
組み立て、接着工程が簡単だと思ったことは一度もありませんよ。簡単な組み立てなんてやったことないなあ。そんなもんあるの?入念な準備をして、お茶を飲んで、イメトレしてから望んでいます。(笑)
上手くいかないこともありますよ。見逃していたことが接着剤を入れると発覚したり・・えーってなりますけど、結果は受け入れます。そして修正します。そうやって学んで来ました。だから上手くいかないことも「いいこと」だと思います。
ズレは木工も金属加工も手作りなら起こるものだし、それをどうするかも面白い。DIYは楽しんでこそですからね。
質問2と3は次の記事になります。
こんにちは
返信削除疑問にお答え頂きありがとうございます。
とても詳しく書いて頂き嬉しいです。
そもそも練習用に選んだ安い15mmぐらいの薄い杉材だと難度が上がるんですね、
やってしまいましたね笑
精度良く作製しなるべくズレをなくすようにするに越したことはないですが、ズレは0.5mm程度ならあとから帳尻を合わせるという具体的な数字を提示して頂けてとても気が楽になりました。
雇い実加工のポイントもとてもわかりやすかったです。
ノミで丸い角を四角にしようかなと思いついてはいたのですが、ピッタリたりというこは組み立てが難しい、それと特に木口面のジョイントの場合、失敗してジョイント周りを割ってしまわないか心配でしたが今度チャレンジしてみます。
仮組時のポイントも、(あ〜だからネジ打つ時にズレてたのかも)と納得でした。
板の組み合わせを気をつけて次はやってみます。
コーナークランプは持っているので今度使ってみたいと思います。
接着剤についてはほとんど気にしていなかったので次から意識してみたいと思います。
(先日、横溝加工で2枚の板を一枚するとき接着剤が多すぎたせいで接着剤を入れる前は隙間なくピッタリ一枚になったのですが、接着剤をいれたら隙間が空いたので、溝を若干緩めに作って接着剤分の厚み?を考慮したりして作り直してました。)
ガタつきの修正はやはり地道に何度も確認しながらペーパーもしくはトリマーで修正していくのですね。
やりたかはどうやら合っていそうなので安心しました。
次はこの記事を作業中都度見ながら棚作りに再度挑みたいと思います。
特に仮組と本組み時にみたいと思います。
長くなりましたが疑問点に細かくお答え頂きありがとうございました。
スッキリ致しました。
次の記事も楽しみしております。
お役立てれば幸いです。次の記事も準備しています。
削除で、横溝加工のことちょっと気になるので教えてください。これはサネを使って幅矧ぎをして2枚を大きな1枚にしたと言うことですか?ちょうど幅矧ぎの動画を作っているので気になりますねー。
こんばんは
削除横溝加工ですが文面で上手くお伝えできるか不安ですが、1枚は横溝ピットで木端面中央に溝を掘り、もう1枚は横溝ピットで木端面中央が凸になる様に加工して接合する形をとりました。
この形で接着剤を入れない形で最初隙間なく加工することができたのですが、接着剤を入れるとどうしても隙間が空いてしまったので(木槌などで叩いてハメようとしてもびくともしない)、
若干凸面の凸部分を薄くして余裕を持たせると接着剤を入れても上手くいきました。
ただ上記の問題は大きなクランプがあれば力技で解決できるのかなあ?と思っていますが私は大きなクランプを持っていないので上記の方法をとりました。
(2枚の板を1枚にする時はどうしても大きなクランプが必要なのかなあと悩んでいるとこでもあります笑)
その代わり10キロの重しを載せて保定してました。
また以前相次ぎ加工で2枚の板を1枚にする方法も試したのですが、なるべく段違いが起きないよう加工したのですが、段違いが裏表で起きてしまい、裏と表を修正して大変だったので上記の方法を行いました。
強度的にはここで書かせて頂いた2種類とkikikumaさんがおっしゃっていたサネを使っての幅矧ぎどれが一番強度があるのでしょうか?
ホームセンターなどで幅広な無垢材は中々ない、あっても値段が高いので少し大きなものを作る際に2枚の板を1枚にすることは最近よく行っているのですが、以前からん〜どの接合方法がいいのかな?と悩んでおりました。
また長くなってしまったうえ、上手くお伝えできたかわかりませんが、以上が私が行った横溝加工です。
ありがとうございます。実矧ぎには2種あってサネを雇うか雇わないかの違いですが、やっておられることは本実矧ぎといいます。クランプの件は大きい3/4パイプクランプ等があれば強い圧がかけられるので違ってくるとは思いますが、木槌でたたいてもびくともしないのは・・木工ボンドの噛むという性質が原因ですね。これはあまり語られていないようですが、とてもやっかいな特性です。あとは時間のかかりすぎもあるかもしれません。接着剤を塗ってから10分以内に作業を終わらせるのが吉です。
削除ホゾとホゾ穴で例えると、ホゾとホゾ穴がピッタリに加工されていると材料同士の隙間はほぼありません。そこにボンドを入れてホゾを押し込むと途中で噛みます。固着するような感じです。最後までホゾが入ってからならいいのですが、途中で噛みます。クランプで強い圧をかければ押し込める可能性がありますけど、相当な力が必要です。木槌では刃が立たないです。
この記事 https://kikik.studioyutaka.com/2021/04/blog-post_17.html
に書きましたが、解決策は木工ボンドを使わないです。エポキシやウレタン接着剤がいいのですが、高価です。板矧ぎだと量を使うので気になりますね。
木工ボンドを使う前提での話では・・オススメは短い雇い実を最小限に使うです。3-4箇所で長さ5-6cm程度。次の動画でお見せしますよ。
これは個人的な考え方ですが、本実を使うのなら・・サネにはボンドをあまり付けないようにして作業して噛むことを避けます。サネ自体の加工はきつすぎず、ピッタリくらい・・所々ゆるくてもOK。本実の意味を接着面積を増やすことではなく、機械的な接合をするためと考えます。そのためサネをゆるくはしません。
長い雇い実なら敢えてゆるめにしてボンドをちゃんと入れます。こっちは逆に接着面積を増やすために使います。雇い実なら動きますし、接着面が2面ありますからどちらかでも効けばいいかなという考え方です。ゆるくても実際は両方に効くと思いますけど。
接合強度、耐久性ですが、本実が一番ありますが、作業性を思うとメリットはあまり感じません。木工ボンドは隙間がなければとても強力に接合できますから。一方クランプした状態で隙間が紙1枚程度までならいいのですが、それを超えてくると落ちるようです。ということでDIYではサネを入れた方がいいと思いますけど、短くてもいいのではと思ってます。サネは補強というよりも保険ですね。
もちろん、本実加工を楽しんでいるのならいいと思います。うまくいったら気持ちいいですよね。DIYですからね。楽しみましょう。とても上手な仕事です。
こんばんは
削除お返事ありがとうございます。
なるほど、そもそも私がやった本実矧ぎというものではボンドはあまり使用しない、ですが耐久力のある接合方法なんですね。
接着剤が噛む感じは今回痛感しました。
何してもびくともしないので…
急いでやったのですがダメでした…
次出される動画が板矧ぎということですので、そちらも拝見して今回アドバイスして頂いた内容のやり方を更に学ばせていただいて理解を深めたいと思います。
今度はアドバイス頂いたやり方で本実矧ぎと雇い実の2つの接合を試してみたいと思います。
本実矧ぎでピッタリとハマった時は確かにやったぜ〜ってなりました笑
今回もご丁寧にお答え頂きありがとうございました。
次の動画楽しみに待っております。
本実矧ぎでも木端面にはボンドをしっかり塗りたいですね。でもサネ部分には敢えて塗らない・・材料を木端立てして、上から凸部の肩にボンドを容器から直接塗る感じでしょうか。薄く塗るのではなく、ボンドの山を作る感じ。適量のボンドを絞り出すのに少し練習はいるかもしれませんね。本実矧ぎはやらないのであくまで想像ですいません。
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